今年94歳になる祖母は遠い街で叔母とともに暮らしています。

いまだ頭も身体も年の割にはしっかりしていて、できる範囲で炊事洗濯など身の回りのことをやっているそうです。1年のうち何度かは泊りがけで会いに行きますが、そのたびに祖母は私や他の家族のことを心配していたわってくれます。

そんな祖母にせめてものお返しとして、こまめに手紙を書くようにしています。

昔から祖母は私が手紙を書くと本当に喜んでくれました。文章が上手だ、字を綺麗に書けるようになったね、そんな返事がよく返ってきました。

最近では返事が返ってくることも少なくなりましたが、それでも私の手紙を待ち遠しくしていてくれることを叔母が教えてくれました。祖母への手紙を書くために、机の上に便箋と鉛筆、消しゴムと辞書を広げます。鉛筆なんて普段はほとんど手にしないのに、なぜか祖母への手紙は子供のころからいつも鉛筆で書いているのです。

最近、視力が衰えている祖母のために字は大きく書かなくてはいけません。若い頃は小学校の先生だった祖母は漢字の間違いにも厳しいので、消しゴムと正しい漢字を調べる辞書は欠かせません。こうして祖母への手紙を書く準備が整ったら椅子に座って、さて、今回は何を書こうかなと頬杖ついてあれこれ頭の中に思い浮かべるのです。

祖母への手紙には季節の移り変わり、私の身の回りの出来事、他の家族について、最近思ったこと、そんなことを毎回書いています。祖母は都会に住んでいますが、私は今は田舎と呼べるところに住んでいます。私の住むところに来たことがない祖母は、私の話す田舎の景色にいつも興味津々です。山からやってくる猿やイノシシのこと、地元のおばあちゃんの作る郷土料理のこと、稲刈りなどの今も残る日本の風景。そんな祖母にとっては懐かしいような珍しいような話を手紙に書いていきます。

手紙の最後には必ず「またね」と付け加えて、書き終えます。

封筒には切手好きの祖母のために選びに選んだ切手を貼って、それから大急ぎでポストへと走ります。そうっと両手で大事に投函したら、気持ちはもうすでに祖母のところに行っているのです。

いつ着くかな、もう着いたかな、読んだかな、喜んでくれたかな。たとえ返事がすぐに来なくても祖母に手紙を出す、それだけで嬉しくなってしまうのでした。

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