回転寿司ではない、普通の寿司屋さんにいくと、主に2つの方法で寿司を頼むことができます。一つは、「お好み」、つまり食べたいネタを頼んで握ってもらうものです。もう一つは「おまかせ」で、職人がセレクトしたネタを握ってもらうものです。

寿司の値段はネタにより異なりますが、同じネタ、同じ貫数であれば、「おまかせ」のほうが安いことが多いです。これはなぜでしょうか。

そのまえに、寿司屋の仕事についてご説明します。寿司屋というのは、ビジネスで見ると、実はとても大変なお仕事です。その大変な理由は3つに集約できます。

1. 原価率が高い
寿司屋というのは、一番いいネタを、一番高い値段で買う人たちです。特に高級店になればなるほどそうです。状態が特に良い魚で、そしてそのなかで一番いい部分を買おうとすれば高いのは当然です。

そして、寿司屋は「必ず用意しなければならないネタ」というのがあります。それは、マグロです。マグロがない寿司屋はありません。寿司屋は、「マグロが安かろうが高かろうが、常に用意しなければならない」のです。よって、高値で買わざるを得ない日もあります。寿司人気が海外でも広まる中、マグロの奪い合いは熾烈になっており、必然と原価は上がってしまうのです。

2. 仕込みに時間がかかる
例えばマグロですと、マグロを買ってきて、切って握れば寿司になる、わけではありません。すべての寿司ネタは仕込みが必要です。たとえばマグロであれば、身をきれいに切って、氷で冷やした後、身の熟成のために数日冷蔵庫に入れる必要があります。それも、入れっぱなしではなく、都度都度熟成度合いを確認して管理しなければなりません。

マグロだけではありません。すべての魚で、方法が違う別々の仕込みが必要なのです。毎日こうした手間がかかることを寿司職人はやっているのです。

3. ネタを翌日に持ち越せない
高級店になればなるほどネタの鮮度にはこだわりますので、ネタを翌日に使い回すことはできません。もし持ち越したネタを食べた常連客が見抜いたら、その客は寿司屋の評価を落とすことになるでしょう。また、海産物ですので、ネタを持ち越したところで、魚によっては衛生的に食べられないものもあります。

つまり、残ったネタは全て賄いで食べてしまうか、廃棄です。大変にもったいないだけでなく、利益率の押し下げになります。
さて、もとのトピックに戻ります。「なぜ、おまかせが安いのか」。これはすなわち、「寿司職人が残ったネタの状況を見ながら、ネタを無駄にしないために、どのネタを出すか選択できるため」です。

例えば、エンガワがたくさん余っていて、赤貝が少ない日であれば、職人としては赤貝をできるだけ出さずに、エンガワをたくさん使いたいでしょう。

しかし、例えばお客さんがお好みで赤貝ばかり食べると、赤貝がなくなってしまいます。また余っているネタはいつまでも減りません。そうなると、ネタの残りにばらつきがでます。赤貝を散々食べたお客さんが帰った後で、別なお客さんが来呈して、赤貝を頼んだらもうなかった、となると、お客さんはがっかりしてしまうでしょう。バランスよくネタを残しておくことは大切です。

もしこれがおまかせであれば、減ってきたネタを出すのは差し控えて、多く残っているネタを中心に出すことができます。結果、出すネタに無駄がなくなり、廃棄するネタも減り、寿司屋の利益率が高まります。そして、廃棄するネタが少ないというのは、ネタを無駄にしなかったという職人の精神衛生にもよいことですし、ゴミが減り環境にも優しいのです。

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